Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 旅人

旅人の蜜緑。中央の鏡に色が映る絵

蜜緑

正位 · #F0FFF0

夜明けに垣根より摘みたる薔薇の一輪、さすらい人の手に休らひ候。鎧にも重荷にも非ず、旅の最初の息に捉へられたる印のみに候。踵の小犬は朝の草を嗅ぎ、若き旅人と同じく、世の開きたる縁を信じ候。後ろの野は、夜の最後の涼しさにて、なほ銀の如く候。前には絶壁の落ち込みが、未だ言はれざる約束の如く、冴えて静かにて待ち候。世は新しく、気は甘きもの、手のわずかに届かざるものの味を含め候。

薔薇は見せるためのものに非ず候。日の進む前に子の集め得る類にて、露は花弁に付き候。犬もまた大なる獣に非ず、馴染み、急ぎ、求むること少なし候。最初の一歩にて、旅人は年の慎みを以て歩まず、喜びを防ぐことを未だ学ばざる者の開きを以て歩み候。景色は穏やかに候。高き草と川岸との襞の間にて、野生の蔓は妨げ無く走り、夏の実、涼しく滑らかにして香高きものは、葉の間に休らひ候。淡く甘きその一切れは、一方の肩の籠へ滑り込ませ、定まりたる行き先なき朝食のために、用意せられたることも候。

遠き谷にては、硝子の温室が朝の日の下に揺らめき候。そこにて同じ玉の房は手にて集められ、長き木の卓にて分けられ、その香は藁の微かなる土の香と、熱と音との昇る前になさるる仕事の静けさとに混じり候。取引は常に穏やかにて、柳と樺との並ぶ野にて実を育み、下の石の見えるほど清き川の水を引き候き。田舎に点在する小さき町にては、朝の市は箱の音と商人の声とにて開き候。店は同じ実の切れを、焼きたての麺麭の積みと、亜麻に包みたる乾酪とともに出し候。旅人と働く者とのための糧に候。

古き話も御座候。丘の上の僧院にて僧の保つ巻物には、これらの実をなす蔓の栽培の記のあり候。その水分と、暑く定かならざる日に身を爽やかにする力とのために重んじられ候き。絹の道を渡る旅人は、これを負袋へ押し込み、異国の日の下の渇きに対する備えとし候き。手巾と前掛けとの家の布さへ、実を扱ひたる微かにして消えやすき香を帯ぶることあり、庭と木陰と、新しき朝の静かな望みとを思ひ出させ候。

旅人の立つ縁の空模様は、嵐にも静止にも非ず、霧の上がりて世を細き階にて示す、穏やかなる間に候。気は新たに洗はれたる如く、光は野と実との上に艶を投げ候。始まりの可能に思はるる時にて、前へ踏み出す単純なる業にて足り候。

今日、貴殿は厨を動き、新しき実を皿へ切り、朝の茶の傍らに置き候へ。己の犬を歩かせ、あるいは濡れたる草に裸足にて庭に留まり、世の新しさの身の回りに落ち着くを待ち候へ。市の近きにあらば、涼しき野と早朝の収穫との記憶を帯ぶる物を選び候へ。亜麻の布を解き、それに付く香を吸ひ候へ。穏やかにして汚されざるものの約束を、その香は運び候。

今日の色は蜜緑に御座候。
Lucky Color: HoneyDew — #F0FFF0甘きを新しき始まりへ運び候へば、日は開かれ、穏やかに、望みに満ちて御座候。

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