狭き徒歩の路は、野生の崖の縁に沿ひて曲がり候。薔薇の一輪は耳の後に挟まれ、小さき犬は旅人の踵に候。旅人は前へ踏み、始まりの驚きたるにて眼を見開き、上の気は冴えて限り無く候。日は今し方始まり、物語の最初の幕を約束し、空きたる手帳の如く開かれ候。頭上にて雲雀は広大なる空模様を横切り、落ちる前、あるいは飛ぶ前の静けさへ、その歌を貸し候。世は可能性のみにて、風の奔りと、高く上なる日の静けさとにて口笛を吹き候。
古の人の旅を語るときは、開きたる空を語り候き。商人はかつて、草原あるいは海を渡る前に、頭上の穹窿を見て穏やかなる空模様の徴を待ち、上の穹が嵐を遠ざくると信じ候き。物語にて、知るところより知れざるところへの一歩は、常にこの穏やかなる広がりのもとにて踏まれ候。羊飼ひが、漂ふ紙鳶の影によりてはかる、同じ広がりに候。幾世紀も前、旅人はその下を騎り、東方の市より絹の道を辿りて知れざるところへ入り、負袋には望みと麺麭の一塊とを満たし候き。それぞれの語りにて、開きたる穹は地図にして伴にてあり、限りなき招きにて路を導き候。
農夫も水夫も、種子を蒔き、あるいは錨を上げる前に、上の最も穏やかなる澄みを待ち候き。それは山頂より見ゆる澄みにて、雷の一夜の後、すべてが洗ひ清められ、あらゆる雲の地平に低く走るときに候。聖なる峰への巡礼は、草に跪き、手を露にて満たし、上を見て、朝の頭上に深まるにつれ、約束の脈を感じ候き。詩人は、広き谷と限りなき午後とを語るときに、これを呼び候。気の澄みて、遠き村よりの遠き鐘の聞こゆるときに候。
厨にて、磁器の鉢は窓敷にあり、涼しき水を満たし、顫ふる面に頭上の湾を映し候。その鉢はかつて祖母のものにて、垣にて集めたる野生の実を濯ぐに用ひ候き。祭の日には、織りたる吹き流しと灯籠とが中庭に渡され、上の開きに響き、それぞれは新しき企て始まる折の幸の願ひに候。子らは芝生を裸足にて走り、同じ穏やかなる空間にて昇りて落ちる、紙にて折りたる飛ぶ形を追ひ、笑ひを上へ運び候。
旅人の小犬は微風に吠え、遠き野よりの香を捉へ候。旅人の外套の懐にて、薔薇の花弁は顫へ、未だ見ざる庭の約束を保ち候。先の路は明るく、気は静かにて、虫の羽音と、始まりを敢へてする望ある心の定まりたる鼓動とのみに候。
先の日の定かならざるに思はるれば、しばし外に立ち、渡り鳥の高き弧を見候へ。愛でたる器に水を注ぎ、ゆっくり飲み、朝の静けさを感じ候へ。願ひあるいは計画を紙の切れに書き、窓より飛ばせ、気がそれを先へ運ぶを信じ候へ。世の縁に立つさすらい人の信にて、軽く歩み候へ。
今日の色は空青に御座候。
Lucky Color: SkyBlue — #87CEEB開かれたる約束の下を、想ひの裡にても歩み候。