Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 旅人

旅人の雪白。中央の鏡に色が映る絵

雪白

正位 · #FFFAFA

旅人はまさに縁に立ち、手に薔薇を持ち、小さき犬を踵に従へ候。旅は未だ書かれず候。その一歩は軽く、ほとんど無造作にて、地平の彼方なるものを追ひ候。されど周囲には可能性の静けさが御座候。世は待ちにて静まり候。崖は落ち込み、下に待つものは知れず候。されど上は何よりも静かにして明るく、土地自らが初日のために新しき衣を着たるが如くに御座候。

古の物語にて、さすらい人の最初の一歩は、静かな嵐の世を変へたる折に来候。空が覆ひを篩ひ落としたる翌朝を思ひ候へ。木も、屋根も、野も、すべて新しくなり候。枝には冠の如きものが載り、垣は和らぎ、地は清き吹きだまりにて穏やかに持ち上がり候。気は新たに洗はれたるが如く、音は籠もり、足音は冴え候。凍土あるいは峠を行く旅人は、距離を道標にてはからず、静けさの後に幾つの足跡が呑み込まるるかにてはかり候き。日本にては、詩人は静けさの寺の屋根と梅の枝とに集まるを見、始まりと、清さと、白紙とについて句を作り候。阿爾卑斯にては、最初に通る者は、作りてほどなく消ゆる路を刻み、一歩ごとに信の業をなし候。

家の内にては、卓に敷きたる一枚の亜麻布が、新しきことの場を設け候。未だ印なきその布は、麺麭と談話とを招き、集ひあるいは食事の始まりとなり候。冷き浴の後、干し場より取りたる木綿を身にまとへば、糸は肌に柔らかく、改まる感は直ちに御座候。旅人は無垢のまま、世が己一人のために掃き清められ、先に来たりし者の跡は柔らかき外套の下に隠れたる、と見いだすことも候。

家の儀を越え、携ふる薔薇は朝の霜の如く手つかずにて、花弁は昨日の風に傷つきず候。世界の庭にて、花弁は夜明けに凍りたる露の薄き帳を受け、光を捉へども、触れれば溶け候。消えやすき、再び始むる招きに御座候。傍らの小犬は先へ跳ね、手つかずの地に鼻を埋め、後に消ゆる足跡の線を引き候。その旅は汚されざるものによりて印され、景色は暗示を与へず、一歩ごとに新しきことを書くといふ約束のみを置き候。

冬の末の待雪草は、和らぎたる土を押し分けて出で、鈴の形の花は残る霜の重みに頷き候。本草を学ぶ者も子らも、身を屈めてこの花を迎へ、不確かさへの最初の踏み出しの大胆さを、そこに見候。古き世にて、この花の現るるは、待ちの終り、沈黙の後の最初の答を意味し候き。

今日、貴殿は窓を開き、冷き朝の静けさを入れ、世の一と息つきて改まるを感じ候へ。新しき布巾あるいは手拭ひを畳み、手にて伸ばしてより、朝食の卓を設け候へ。嵐の後、外をゆっくり歩み、新しき覆ひに柔らかき跡を残し、新しい一歩ごとにそれが暈けゆくを見候へ。米の鍋を炊き、湯気の穏やかなる雲となりて昇るに任せ、己の物語のほかに印なき始まりを思ひ候へ。

今日の色は雪白に御座候。
Lucky Color: Snow — #FFFAFA初の一歩を迎ふる覆ひを信じ候へば、路の未だ書かれざるところより旅は始まり候。

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