Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 旅人

旅人の淡黄。中央の鏡に色が映る絵

淡黄

正位 · #FFFACD

旅人は縁に立ち、一方の足は空の上に懸かり、衣の裾は微風に翻り候。薔薇は耳の後に挟まれ、茎は棘のためならず、柔らかさのために選ばれ候。踵の小犬は吠えつつ跳ね上がり、腓を突き、この世の堅きものへ注意を引かんとするが如くに候。亜麻の感触、土の野生の香、裸の踝の上の石を温かく打つ日に候。負袋は肩より揺れ、絹に包みたる菓子の皮より、ほとんど多くを持たず候。朝の望みが、息と息との間に畳まれたる一片に候。顔は上へ傾き、空へ開かれ、あらゆる雲、涼しき風のあらゆる暗示が招きなるが如くに候。

無垢は旅人に付き、眼を引く軽さのあり候。薄絹の初めて巴里の遠き店棚へ到りたる時を思ひ出させ候。縫ひ手はその布を、かく細く、かく繊細に、伸ばしたる手の上へ持ち上げ、ほとんど存在せざるが如きを驚き候き。触れ得るものとなしたる、心の囁きに候。羅亜爾の川の、ある村の祭にては、婦人はその同じ空気の如き織りにて衣を着、裙の穏やかなる揺らぎは、戯れつつも定かならざる気分を漏らし候き。旅人はかの人々の中に居るべく、笑ひは混じり、野辺の食の霞を跳ね、野生の花を踏み、未来を顧みず候き。

さらに昔、美第奇家の厨にて、料理する者は卵と砂糖と麦の粉と、柑橘のひねりとを打ち合はせ、その混合物を鍋へ注ぎ、供する皿より浮かび上がらんとするほど軽き糕として膨らませ候き。かかるもてなしを初めて味はふ客は、眼を閉じ、春の最初の温かき日を、淡き霧雨が記憶と約束とをともに運ぶさまを思ふことも候き。路傍の茶の店にても、同じ甘き軽さを見いだし候。旅人は一と息つき、後ろの塵をしばし忘れ候。旅の上の旅人は、かかる供へを真の笑みにて受け、指に屑を散らしつつ、なほ前へ歩み候。

空模様もまた、その瞬間の心を運び候。霧の垣根に沿ひて浮かび、全くの雨にも全くの日にも非ず、二つの境をぼかす、かかる朝に候。あるところにては、この時に園丁は道具を出し、移植ごてと潅ぎの缶とを持ち、金盞花と甘菊とにて縁取られたる床へ苗を植ゑ候。出で立つための朝にて、門の掛金を外し、野生の中へさすらい、足元の路と、伴の鼻の穏やかなる突きとを信ずるための朝に候。耳の薔薇は夜明けに集められ、露の記憶と、未だ放たれざる香の約束とを保ち候。

今日、貴殿は早き気の中へ歩み出で、世の目覚める直前の、かの静けさを探り候へ。麦の粉と砂糖とを打ち合はせ、果皮の香と膨らむ生地の香とを、厨に満たし候へ。贈り物を絹に包み、あるいは薄く織りたる布の一枚を卓へ広げ、窓の微風を捉へさせ候へ。友に、冒険の準備の成れることを告げ、足下に見えざる一歩にても、笑ふことを自らに許し候へ。

今日の色は淡黄に御座候。
Lucky Color: LemonChiffon — #FFFACD世の今しも開くるが如く軽く歩み候へば、旅は貴殿の立つところより始まり候。

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