Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 月

月の薄群青。中央の鏡に色が映る絵

薄群青

正位 · #F0F8FF

夜は世界を曖昧の中へ静め候。二つの塔が道の縁に立ち、先に横たはるものを十分には顕はさぬ月の下にて、その輪郭は和らぎ候。入口にて、飼はれたる犬と野生の狼とが並びて停まり、それぞれ警戒と本能との緊張を身に宿し候。潮は緩き律にて動き、砂に線を引き、戻るごとに浜を変へ候。月の輝きは穏かに場の上へ注ぎ、形を半ばのみ照らし、示すより多くのことを匂はせ候。石の一つ一つ、砂丘の草の葉の一つ一つは、影と光との間に在り、知る世界は決して確かには御座らず候。

朝靄に包まれたる沿岸の村にて、漁人は最初の光の前に起き候。湿りたる岸に沿ひて舟を整え、合図の塔の遠き閃きに導かれ候。帆布の帆は、張りて堅く、広げられ、霧を滲む最も微かなる薄群青の光を受け候。引き潮のとき、子らは小さき桶を石の上へ引き、滑らかなる貝と、海に磨かれた硝子とを集め候。海の息は塩の気の中に残り、木の戸の縁と、風雨にさらされた門の鉄工とを辿り候。一夜、綱に掛けて置きたる衣は湿りの中に揺れ、涼しく塩けある気にて布は和らぎ候。

岸を遠く離れたる静かな市の路にて、女の仕立職が夜明けの直前、高き窓の傍らに坐り候。仕事場は丁寧に整へられ候。卓の上に畳みたる細き絹、針の列、螺鈿の釦の瓶に御座候。窓硝子は、日の緩く穏かな到着を招き、女は火熨斗の重みの下にて縫ひ目の一つ一つを平らにし候。終へたるとき、亜麻の巾を積み、細き紐にて結び、最初の客に備へ候。外にて市は静まり、時の過ぎを印すは、乳の荷車の音と、遠き教会の鐘のみに御座候。日は、紗に包まれたるごとく、柔らかく開け候。

山の高きところにて、旅する者は、冷気の地を掠むる峠へ近づき候。孤りの宿にて、朝食は磨きたる皿に供され候。新しき乾酪、朝の焼きの麺麭、温き乳の瓶に御座候。食堂は静かにて、木の椅子の軋みと、毛の沓の柔らかき足音とのほかは御座らず候。窓の外にて、峰は低き雲に和らぎ、下の川は微かに光り、空の早き光を映し候。ここにて、見えるものと見えぬものとの線は薄くなり候。長き廊下の端にて、誰かが、屋内と戸外との閾を音もなく動く迷ひたる獣を垣間見ることも御座候。

夜と日との静かな縁は、かかる日常の不思議に印され候。硝子が磁器に当たる音、炉棚の上の、新たに摘みたる待雪草の瓶、半ば開きたる窓を過ぐる涼気の流れに御座候。これらは、世界が馴染みなくも近く感ぜられ、物の輪郭が最も細き手にて描かれるときの瞬間に御座候。

今日、貴殿は窓を早き気へ開き、屋根より霧の上がるを見るもよし、寝台の傍らへ陶の杯を置きて穏かな夢を招くもよしと存じ候。家を出づる前に熨したる手巾を懐へ入れ、あるいは夜の涼の残る敷瓦を素足にて歩き候へ。いずれも、切れ端のみに顕はるる道への一歩にて、静かな光を手元に保つ方法に御座候。

今日の色は薄群青に御座候。
Lucky Color: AliceBlue — #F0F8FF薄群青は影と朝との間に待ち、亜麻の上の息のやうに柔らかく候。

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