今夜、雷は石を裂かず候。されどその影は、砕けたる軒飾と鋸歯の屋根のあひだに瞬き候。塔は立ち、幾何は不確かにて、その角はありたるものと成るものとの張りにて移り候。嵐の後の静けさの中、旧き煉瓦は共に着き、記憶と建築の頑固さとにて支えられ候。崩れは延ばされ候。されど内に居る者は皆、柔らかく歩き、壁がすでに雷を聞き、それを忘れず候ことを知り候。
多斯加納の丘にて、地は足の下に落ち着かず、村人は幾世のあひだ似たる不確かさの重みを運び候き。雨が土を浸し、根が斜面を握るとき、家族は台所に集まり候。その台所は、地そのものより碾きたる色料の甕にて縁取られ候。遠き火山の床よりの塵は、押されて篩はれ、臼と杵の傍に場所を見出し、絵具か薬かと成る用意に候。土の跡は、長き季節を通じて手と心とを確かにし候。工房にて、職人は原料を粉に碾き、水か油かに混じ、祭壇画と天井とに刷き候。そこで乾き、脆くして堪へる面と成り、幾世の色は一つの午後に圧縮され候。災は常に表面のすぐ下に候へども、美は日々を錨するといふ思ひ出に候。赭は、その圧縮されたる色の名に御座候。
外にて、畑は地平まで伸び、暁に素足にて踏まれたる粘土の道にて印され候。ある場所は休耕地にて、ある場所は新たに返され、これらの土の紐は幾代を養ひ家を与へたる交易の脈に候。陶工は掌の下にて同じ土を捏ね、地の移りと不確かなる食事の音とに堪へるほど頑丈なる鉢を形づくり候。鉢は初め粗く候へども、時と窯の火とがその面を滑らかにし、やがて家より家へ巡り候。涼しき夕、海岸より密史脱拉の風の吹き入るとき、石は乾き候へども憂ひは乾かず、湯気を立てる収穫の汁にて満たされ候。
台所にて、塊は石積の如く割れる皮にて焼かれ候。香は土の如く、わずかに鉱物にて、報せと手紙と、次の震動か子守歌かを待つ部屋を満たし候。塊より切られたる一片は、橄欖の膏を塗られ、動揺に対する護符の一種と成り候。卓は幾年の洗ひにて厚き亜麻布にて整へられ、布は手の中にて粘土の如く重く候。時と共に糸は擦り切れ候へども、繕はれ縫はれ、各々の繕ひは崩れに対する小さき抗ひに候。
都にて、それらの丘の色料は谷の遥か先へ旅し候。樽に積まれ、薬舗にて量られ、商人が地震と運とを同じ息にて語る市にて交易され候。壁画を描く者の手にて、塵は聖人の後ろの空と成り、追はれたる者の足の下の畑と成り、傷の世話されたる後に退く傷痕の陰と成り候。それは中心たることを求めざる色にて、嵐がその仕事を終へざるとき、残つて立つものの形を保つことに足り候。
今日、貴殿は臼と杵にて土を碾き、各々の緩き回転を歴史との会話として覚え候。麺麭を捏ねて脹らせ、各々の泡を圧力の中の間として感じ候。古き陶器より塵を払い、未だ道を譲らざるひびを辿り候。或は布を手にて繕ひ、捨てずして擦り切るものを強め候。各々の小さき行ひにて、塔の遅れは尊ばれ、待つことの重みもまた尊ばれ候。
今日の色は赭に御座候。
Lucky Color: Sienna — #A0522D土と時に形づくられたるものに辛抱強き力は隠れ、今日の所作は静かなる繕ひに御座候。