Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 世界

世界の赭。中央の鏡に色が映る絵

赭

逆位 · #A0522D

牌の上にて、花環の人は回り候へども、環は閉ぢず候。月桂は割れ、踊る人の足は地の上に浮かび、全くは踏まず候。花環の心の結びは緩く、ほとんど守られたる約が手より滑りたるが如くに候。こは最後の勝利の場所としての世には御座なく、ほとんどと閾の畑、嵐の破るる直前の空気、あるいは都の塔がなほ視界の外にて旅の終わる刻に候。到着は遅れ、成就は停まり、世そのものは堅き球には御座なく、地平に凭る丘の上の町に近く、その古き煉瓦は憧憬と終はらざる歌の物語を保ち候。

その町は多斯加納の尾根に見出だされ、かつて伊特魯里亜の履の下に圧されたる土より築かれ候。午後の半ば、鐘は橄欖の林の上に響き、広場は足元に温かく候。丘より切り出されたる粘土は、屋根の瓦と葡萄酒の壺へ形づくられ候。都の名は、拱の下の土そのものを意味するに至り、幾世紀も絵の顔料と器の釉へ働かれたる土に候。これらの黄土の塊を初めて碾くを学びたる女は、夜明けの静けさの中にそれをなし、手は労働と記憶にて染まり、粉は空気に上がり、同じ土にて裏打ちされたる竈にてその日の麺麭は焼け候き。その土の色は赭に御座候。

かかる場所の天候は、殊に夏の終わりにて、稀に優しく候。風は塵を拾ひ、空は案じ、雷は畑の上を転がり候。雨は急なる力にて到り、道を溢し、壁に筋を残し、穴倉を満たし候。農夫は葡萄を覆ひ、瓦屋根の漏りを繕ふために急ぎ、今の忍耐、嵐の過ぐるまでの待ちが、後の収穫を意味することを知り候。嵐の荒るるあひだ、旅する者は拱の下に庇はれ、珈琲の杯を手に抱き、水が赤土の路に新しき細流を切るを見候。内にても、ほとんどそこ、の感じは残り、隙間風は雨戸を抜け、焙りたる栗の香は湿りと混じり候。

工房にて、陶工は土の塊を掌のあひだに回し候。轆轤は回り、粘土は上がり、未だ器には御座なく候へども、それへ寸を進め、親指は縁を撫で、形は己が期待の重みにて揺れ候。棚には窯のための瓦が御座候。一つ一つは作り手の印を押され、火が物語を定むるを待ち候。近く、子供は団栗と磨きたる石を窓の棚に並べ、環に整え、友の帰りのために一つの隙を開きたるままに候。終はらざる環は、望の静かなる紋、停まりたる世の約に候。

この日を尊ばんとして、貴殿は粘土を形づくると同じ世話にて麺麭を捏ね、手の温みを感じ候へ。遠き道にて家へ歩き、普請の場あるいは古き煉瓦の壁にて間を置き、肌理の面に触れ、貴殿の前の手を思ひ候へ。全くは終へざる手紙を書き、結ぶより言葉を残させ候へ。あるいは厨にて木の匙にて鍋を掻き混ぜ、いづれの食事も終わりと始まりの両方を印すことを思ひ出し候へ。

今日の色は赭に御座候。
Lucky Color: Sienna — #A0522D今日世の弧は全くは閉ぢず、貴殿の環も開きたるままにし、閾にて間を置き、次の一歩を待たせ候。

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