古き石の道にて、戦車の車輪が碾き震ふところ、進みは百の別々の急ぎに割れ候。軛の獣は離れむと突進し、矛盾する行き先へ力み候。されども旅は、動きそのものが命令となれるゆゑにのみ続き候。粘土の地より引かれ、多くの手にて形作られ、窯の息の中に硬くなる土地にて、煉瓦は灰を載せたる雲の下にて冷え候。これらの煉瓦は庇の約を思ひ出させ候。されども不注意の積に並べられ、あるいは野に半ば埋められたるまま、手綱の滑りたる御者の意図に似候。荷車は音を立て、車輪は平らならざる道に呻き、遠き川床よりの石は、洪水と旱を覚ゆる漆喰に埋められ候。
町にて、建物の列は角張れる肩にて立ち、その顔はこれらの焼きたる塊より組み立てられ候。夏の夕の重き空気の下、塵の香と煙の記憶は小路に沿ひて残り候。煉瓦は年々の雨と正午の熱にて傷つき、欠けたる縁と崩れたる角の一つ一つにて時の過ぎを見せ候。それらの形作る壁は厨を囲み、窯は同じ材料より建てられ、火の死したる後も長く食の温みを保つに足る厚みに候。麺麭は内にて膨らみ、皮は面に会ふにつれ音を立て候。時に戸は焦りにてあまりに早く開けられ、粉は粗き炉にまぶされ候。
これらの煉瓦の交易そのものが旅なりし時代が御座候き。運河に載せられたる艀、交易の道を少しずつ横切る遅き荷車、積み渡しの労、手より手へ候き。それぞれの煉瓦は作り手の印を運び候。側面に圧されたる拇指の跡、急げる冷えよりの髪の如き割れに候。物語は道に沿ふ休息の場に巡り候。旅の人は道より離れ、固く低く建てられたる中継の宿の陰に入り候。そこにて、厨人は煮汁の鍋を攪き、色は熱を保つ壁に当たつて煮えるにつれ深まり候。味は根を張り、土の如く実質に候。庇を建てし同じ手にて形作られたる味に候。
別に、これらの建物の後ろに押し当てられたる庭にて、煉瓦は高くしたる畝を縁取り、蕃茄は低く重く塊となり候。地は温かく、季の最初の嵐は列のあひだの土を滑らせ候。空気は厚く垂れ、雷の戻るやうに候。手車は傾き、荷を道に零し候。遠き隅にて、古き鏝は忘れられて休み候。刃は年々の漆喰を刮ぎ、草を抜くにて印され、柄は決して動きをやめざる手の握りより骨の如く滑らかに候。雨は再び来候。道は寸にて移り候。されども煉瓦は残り、労と休止の巡りの沈黙の証人に候。
今日、人は暁に涼しき煉瓦の上に跪き、掌の下に夜の雨の残る記憶を感ずるもよく候。土窯にて麺麭を焼き、皮と炉の音に耳を澄ますもよく候。煉瓦に包まれたる竈の上にて煮汁をゆっくり攪き、その面の深まるを見るもよく候。あるいは鏝を取り上げ、境が昨夏の育ちの形を保つ庭を世話するもよく候。
今日の色は火赤に御座候。
Lucky Color: FireBrick — #B22222辛抱の手にて作られたる、着実なる土台が御座候。