牌の中にて、二つの姿は枷にて保たれ候。されど枷は軽く休み、持ち上げて除き易く候。地は硬く、壁は慰めには近すぎ候。されど古き戸は、見ることを気にする者あれば、半ば開きて立ち候。姿のあひだの空気は沈黙して淀み、かつて烈しく、今は時と静けさとにて摩り減らされたるものの香を運び候。ある人はこれを囚はれと呼び、ある人は習慣と呼び候。
霧の市の町の縁に、石工にて知らるる通りが御座候。舗装と低き建物とは、土地の岩より作られ候。岩は、流れの優しき上流にて切り出され、艀は朝に静かに浮かび候。石工は槌にて塊を打ち欠き、塵は昇り、決してまったく落ちつかず、残りてなほ噛まざる思ひの如くに御座候。市の広場にて、この石の板は腰掛けと店先の楣とを形づくり、すべて年月の触と多き靴の通過とにて滑らかにされ候。何もきらめかず候。何も装はず候。
昔、石は最も古き町の建物のために選ばれ候き。雨にて輝きも暗くもならず、ただ和らぐゆゑに御座候。僧はこれを僧院へ運び、礼拝堂の段と回廊の席とに用ひ候き。その袍はそれの上を掃き、その手はそれより築かれたる麺麭の窯の上にて温まり、その夜はそれにて縁取られたる房の中に静かに育ち候き。僧院の台所は、白鑞と土器との器にて満ち候き。単純なる器、鉢と匙とに御座候。風の吼ゆるとき、石はその声を吸ひ、廊下を穏やかに残し候き。
畑の境の外にて、羊飼は同じ石の空積みの壁を築き候き。それは地の骨格を形づくり、保たるるものと野生に残さるるものとを印し候き。時に、早春、霜はこれらの壁と果樹園の木との上に落ちつき、すべてを鈍らせ候き。解くるを待つ働く人は、飲器の周りに手を掌に収め、湯気の昇るを見、空気は静まりて重さなく候き。彼らは染めざる羊毛より縫ひたる布の外套を着、天候にて強められ、羊の記憶と茨の擦れとを運び候き。これらの外套は、夜、戸の傍の釘に掛けられ、空気と仕事との香にて重く掛り、静かなる鎧に御座候き。
場所の名は、石切場にて形づくられたる邑より来候。利得の邑にて、硬き地より運び去り得るものと、後に残されたるものとの上に築かれ候。町の最も古き店にて、貴殿はなほ、手にて織りたる細かき淡き手拭ひの布の束を見出だすことも候。市の日のために積まれ候。麺麭屋は、捨てられたる布より切られたる四角に塊を包み、紐にて結び、内の麺麭は遅く冷え、決して焦がず、あまり速く冷ゆることも御座なく候。嵐の集まるとき、通りと壁とは静けさを帯び、町が息を止むるが如く、屋根は騒ぎなく水を落とし、すべてはありしままに留まり候。
今日、鎖を外したきならば、貴殿は古き石の腰掛けの上に生地を捏ね、手の下より昇る温かさを感じ候。厚き羊毛の外套に身を包み、日の出の前に出で、沈黙の貴殿の周りに集まるに耳を澄まし候。あるいは素朴なる手拭ひの四角を取り、貴きものの周りに包み候。一塊、一通、小さき心配にて、隅を貴殿の欲するほどきつく、または緩く畳み込み候。茶を白鑞の皿の上に置き、湯気の欲する方へ漂はせ候。
今日の色は銀鼠に御座候。
Lucky Color: Gainsboro — #DCDCDC鎖は貴殿の思ふより軽く、支度の整ひたるときいつにても出で候。