Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 月

月の浅石鼠。中央の鏡に色が映る絵

浅石鼠

逆位 · #778899

牌は転じ、夜は不透明にして変はりやすくなり候。古き石の橋は膨らむ霧の背後に失はれ、犬の馴染みなる吠えは川岸の響く沈黙に呑まれ候。狼のかつて影に蹲りしところには、湿りたる輪郭のみが残り、その生き物が湿地の葦と、柳の下に集まる浅き水溜とへ褪せたるかのごとく候。世界は、風さえ躊躇ふほど深き静けさへ溶け候。道の上にて月は帳を掛けられ、雲は固く引かれ、野生と飼はれたるものとの差は、同じ水を含みたる土へ押し込められ候。

かかる風景にて、すべてが石板の忍耐を帯び候。水の縁の近き、捨てられたる小屋の屋根瓦は、幾十年の雨と霜とを経て、その粗い面は露と、古き足音の記憶とにて滑り候。石工はかつて、丘の腹へ彫りたる石切場よりこれらの石を持ち上げ、一つ一つを手にて割り、丁寧なる列に据ゑ、季節の重みと幾代の過ぎとを担ふべく候き。同じ石が古き村の井戸を張り、その円き唇は千の手の触りにて滑らかに磨かれ、一つ一つが桶を下ろし、曇りたる空の鏡を引き上げ候き。黄昏、子らはかつて冷き縁へ掌を押し、下の暗き水の囁きを聴くことを互いに挑み、井戸がその涼しき深みに古き秘事を保つと信じ候き。その石の色は浅石鼠に御座候。

小屋のすぐ彼方、丘の腹は、羊飼のかつて用ゐし道の残りにて縫はれ候。霧の朝、羊はその不揃ひなる縁に沿ひて集まり、羊毛は滴にて重く、その動きは、踏み固められたる土の上の蹄の穏かな打ちのほかは沈黙に候き。静かな天候にて、羊飼の杖は苔の斑なる敷石の一劃に寄り、今は羊歯と蕁麻とに見過ごされ候。霧の低く坐るとき、古き道具の輪郭が現るることも候。忘れたる鑿、鋤の一部、丘の骨を庇と炉とに形づくりし者の残したるものに御座候。

気の霧にて厚く、何も確かならぬ日、村は庇へ寄り候。女は重き肩掛を肩へ引き、頑き山の羊より紡ぎたる粗い糸にて織り候。火の傍らにて薬缶は唸り、傷だらけの錫の縁が茶の温もりと、粘土の杯を握る手の慰めとを保ち候。炉そのものは、切り出されたる石の切片にて縁取られ、一つ一つが労働の記憶にて、暗きを押し戻す望のうちに共に敷かれ候。かかる夜、灯を点じて窓に置くことは正しきことに御座候。定かならぬ暗きを辿る旅する者のための火にて、その靴は苔むし、雨を含みたる路へ沈み候。

この戻る夜に会ふ方法も御座候。最後の雨の後の静けさにて路を歩き、井戸の冷き石へ掌を置くために停まり、あるいは肩掛を近く引いて窓の傍らに坐り、梟の遠き呼びを聴くことに御座候。人は薬缶を沸かすに掛け、湯気の巻いて消えるを見、あるいは見出だしたる石を炉へ押し、道を形づくりし者の静かな記憶となすことも候。

今日の色は浅石鼠に御座候。
Lucky Color: LightSlateGray — #778899霧は降りて名は流れ去り、井戸のみが記憶し候。

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