Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 月

月の石鼠。中央の鏡に色が映る絵

石鼠

逆位 · #708090

月なき夜が静かに湿地の上に重く、かつて丘と湖とを分け、野生の犬と飼はれたる伴とを分けたる輪郭を呑み候。かかる夜、葦の間の道は定かならず、見守る者と見守らるる者との境は、厚くなる霧の中に溶け候。踏み石は湿りの皮の下に消え、水を横切る阿比の声は、遠き狼の叫びへ暈け候。葦の戦ぎの背後にて、世界は、黄昏の石切場をかつて取り憑きし同じ静けさに包まれ候。そこにて工人は道具を置き、切られたる面の中の風の低き唸りを聴き候き。

これらの時刻、石板の瓦の屋根が、内なる者を冷き露の篩ひより庇ひ候。同じ瓦は、苔の線が古き傷の上を這ふ古き丘より切り出され候き。雨はこれらの板へ押し、絶ゆることなく執拗にて、その模様は深夜を過ぎたる敷石の路の、失はれたる足音の律を響かせ候。遠きところにて、煙突の影が屈せぬ空に対して立ち、鳩の一羽か二羽を戴き、その羽は煤と時とにて鈍り、測り難き目にて見守り候。その瓦の色は石鼠に御座候。

庇の外にて、道は伸び、遠く去りし手の建てたる石垣の間を曲り候。板の一つ一つは、霧の朝の記憶にて重く、羊飼が苔と霧の沈黙とに縁取られたる野を通じて群れを導きしときに御座候。海の傍らの古き町にて、漁人はかつて灯の光にて網を継ぎ、舟は塩水にて暗き小石の散る浜へ引き上げられ候き。これらの空の下にて海そのものは、口にせぬ秘事の鏡となり、波は静かに、打ち上げられた流木と、忘れたる物の割れし殻との上へ畳まれ候。

内にて、鍋が竈の上に煮え、蓋は穏かに鳴り候。厨人は、遠き屋根と同じ岩より彫りたる乳鉢へ手を伸ばし、干したる迷迭香と杜松とを細き粉に碾き候。炉は石にて建てられ、触るれば涼しく、百の冬の印にて窪み、燻る木の温もりを保ち候。卓の上にて、毛の外套が畳まれて横たはり、雨より入れたる羊の毛より紡がれ、その織りは夜の気を撥ねるに足るほど密に御座候。

外の気は、来る天候の約束にて厚く候。雲は頭上に積み、星を晦まし、軒に沿ふ樋が霧雨の最初の滴を受け候。戸の傍らに置きたる靴は硬く乾き、その底は、絶ゆる囁く霧雨に洗はれたる路の滓にて印され候。戸を掛け、灯を整へ、雨の謎と石の秘めたる語とを聴く夜に御座候。

今日、貴殿は軒の下に停まり、瓦の上の雨を聴き、あるいは石の鉢にて香料を碾きて夕餉に味を付け候へ。隣家の屋根の古き石板の上に指を走らせ、あるいは多くの季節を経たる外套に身を包み候へ。川あるいは潮に滑らかにされし小石を懐へ携へ、風と水とにて擦り減りたる場所の静けさを記憶し候へ。

今日の色は石鼠に御座候。
Lucky Color: SlateGray — #708090霧は名づくるところを名づけ、今夜の道は貴殿を記憶し候。

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