旅人
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正位
崖の縁に、荷物の少き人が立ち候。足元には犬、手には薔薇が御座候。後ろを見ず、次の一歩のみを見候。
旅人は、まだ名の附かざる始まりに御座候。地図の空き候こと、行き先の定まらざること、それ自体がこの牌の力に御座候。経験は荷物と成り候。旅人の荷物は小さく、世界をまだ分け候はず。
今日のこの牌は、支度の整ふを待たず、縁より足を出すことを象り候。
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白 言葉を発する前の静けさより旅は始まり、無垢は道を開き候。
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雪白 初の一歩を迎ふる覆ひを信じ候へば、路の未だ書かれざるところより旅は始まり候。
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白緑 望みて踏み出だせば、路は開き候。
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蜜緑 甘きを新しき始まりへ運び候へば、日は開かれ、穏やかに、望みに満ちて御座候。
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萌黄 新しき香草の香、あるいは涼しき雨の感触は、貴殿の旅を覚まし候。
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天青 晴れし始まりの兆しに従ひ候へば、一歩ごとに世は招かれ候。
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空青 開かれたる約束の下を、想ひの裡にても歩み候。
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草緑 足下を見候へば、この路は貴殿を先へ運び、旅は常に足下より始まり候。
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麦色 糸の一筋を携ふれば、始まりは貴殿を見いだし候。
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淡黄 世の今しも開くるが如く軽く歩み候へば、旅は貴殿の立つところより始まり候。
逆位
同じ崖に候へども、足は地面を信じ候はず。振り向かず落ち候か、縁にて立ち尽くし候か。いづれも、一歩の置き場を見候はず。
旅人が逆位となれば、始まりは空回りし候。目新しさのみを追ひ、足元を忘れ候。あるいは、まだ来ぬ危きを数へ、一歩を明日へ送り候。犬の警告も、薔薇の軽さも、届き候はず。
今日のこの牌は、出立の前に手の荷物を一度開くことを象り候。要るものと、ただ怖きゆゑ握るものとを分けるための一枚に御座候。
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幽白 ほとんど見えざる一歩こそ最も安全にて、わずかに到るものの穏やかなる触れを信じ候。
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煙白 形を成し、かつ褪する徴を信じ、小さき業ごとに穏やかなる跳躍を印し候。
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霞桃 穏やかさを定かならざる刻に留め候へば、静かな一と息は見えざる地を示し候。
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石鼠 今日の教訓は知るところの縁に乗り、跳躍の前に辛抱を求め候。
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薄墨 定かならざる地を渡る前に一と息つき、緩く定まりたるものが次の一歩を導き候。
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黒 地の見えざるときに軽く歩み、音の変はりて戻るところを聴き候。
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臙脂 跳べ候。
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火赤 手と熱とにて建てたる庇はあらゆる跳躍に耐へ、見えずとも次の一歩は堅き地を見いだし候。
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深紅 跳躍は着地の前に来たり、運は守られざる一歩に従ひ候。
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茜 あるものは跳躍の後に最もよく熟れ、今日、味は信の一種に御座候。